浪速のビョークになりたかった

なりたかったけどなれなかった、でもそれでええんです

ラッキーストライクガール

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タバコを吸う。

17のときにリンゴ・デススターのライブに行き、数人のよくないお友達ができた。よくないお友達は同い年の男の子たちで、市内の子(当時大阪の外れも外れのど田舎に住んでいたのでシティーボーイはちょっと憧れだった)。

よくないお友達はそれなりに音楽の趣味が合ったうえでもっとめちゃくちゃセンスが良くて、ルックスも良くてタバコを吸っていて、バンドをやっていて、私はなんか知らないけどしばらく経ったのちそのバンドに加入して、つられて少しだけタバコを吸っていた。

結局1年も経たないうちに家庭の事情や短大進学に伴って学業が忙しくなって辞めちゃったけど、よくないお友達ふたりが喫い方を教えてくれたラッキーストライクとピースはおのずと私のファーストかつ思い出のタバコとなる。

思い出のタバコは私のリュックにお守りみたいに入っていて、やなことがあった日にだけ大学の小さな喫煙所で、自室の出窓で、帰り道の田んぼの畔で相変わらずコソコソと吸っていた。音楽、地下のライブハウス、タバコ。知らない世界を教えてくれたイケてるお友達、が教えてくれた諸々もすっかり私のものだ。

 

20歳になりインテリアデザイナーで正社員という肩書きを手にすると、公に吸えるのと仕事柄日々頭フル回転なのとおっさん社会なのとでとにかく喫煙量が増えた。

なんとなく吸ってるとナメられない、強くなった気がする。別に周りもそんなんだから嫌な思いすることもあんまりない。22歳を待たずしてちょっと中途半端な年齢で社会に出たものだから、なんだか私の盾になってくれているような気がした。

 

浮気をしたこともあって、好きになった人がずっと吸ってるメビウス6ミリショートボックスを真似てみた時期もある。ベッドサイドに置いておくとなんだかそういうことがあったみたいでニヤニヤしちゃって、それが実現しちゃってからもしばらくは本人が置いていった空箱とガス切れのライターを同じところに置いていた。

案の定うまくいかなかったのでちゃっちゃと(嘘、2ヶ月くらいかかった)ゴミ箱に捨ててラッキーを吸う。涙と煙でよくわからない味がした。

 

仕事を辞めてからはタバコ雑貨屋を兼ねている変な喫茶店でバイトをした。まあまあ楽しかったし洋モクからアルカポネのぶっとい葉巻までいろんなタバコを覚えた。

常連のおじいたちがはじめて吸ったタバコの話をしてくれる。

両切りのピースしかない時代、小屋の藁にあぐらをかき思いっきり肺に吸い込む。クラリときて藁の中に頭を突っ込む。

そんな話にピースの甘い香りと藁の温かな匂いを想像したりして、そんな時間が好きだった。いろんな人と話をした。

ちょっと喫煙者として引け目を感じるこの時代に、1つの娯楽としての喫煙を覚えたような気がしてなかなかにいい経験だったと思ってる。

 

そんなこんなで気づけば一日一箱開けている。激務も至るポッケから出てくる空箱もヤニ臭さも当たり前でまあまあそんな自分が嫌いじゃない。

 

ラッキーストライクはお守りだ。タール11mg500円。多少値は張る、すぐ燃え尽きる。

でもポケットの中でちょっと背伸びしてた頃の自分を携えているみたいで、あのイケてるパッケージをまじまじと見るとなんとなく背筋がしゃんとする。

私のそばにこれからも少しの幸運を運んできてくれよラッキーストライク。体と世間の許す限りでいいからさ。

 

By Beshy